Budo World

流派の成立

 武技に秀でた天才的人物が登場すると、その技術を教わろうとして必然的にその周囲に人が集まる。
 武術には一つの大きな特徴がある。それは徹底した秘密主義をしいていたということである。自分の獲得した極意をめったには教えない。なぜなら戦国乱世にあって自らの名声が高まるのは、他にはない高度な技術をもっているからであり、これが他に流れて広まってしまえばその人の特徴はなくなってしまう。また自分が教えた技術で逆に殺されてしまうかもしれない、そういったシビアな世界でもあった。
 しかし世情が落ち着いてくれば状況は少しずつかわってきて、弟子をとり教える者がでてくる。そうすると師と弟子からなる特殊な集団が形成される。これが流派である。
 流派の成立には以下の三つの条件がある。

  • 天才的人物の出現
  • 技法が非常に高度であること
  • 技法の体系と教習課程が整備されていること

 最後の技法の体系と教習課程が整備されているかどうかということが、その流派がその後いかに栄えて行くかにかかわってくる。流祖といわれる天才的人物がどれほど高度な技術をもっていても、これがなくては流派の存続は難しい。
 武術の中で最も早くに流派が成立したのは弓であり、14世紀初め頃といわれている。剣術や柔術・槍術などの流派は15世紀後半にその源流を求めることができるが、流派として確立していくのは16世紀半ば以降である。

文責:酒井利信