Budo World

武道ワールドへようこそ—ご挨拶

酒井 利信(筑波大学)

 武道は日本で生まれ発展した運動文化ですが、現在では世界中に広がり、地球上のいたるところで、男女を問わずあらゆる年齢層の人たちの間で盛んに行われています。武道を行う人たちがどういった意識をもってそれぞれの武道種目を始め、そして継続しているのかということは様々です。武道を実践する理由としては、競技としての面白味を感じて、あるいは護身のため、日本文化としての武道に魅力を感じて等々があると報告されています。このうち海外においては、日本文化の理解のために武道を稽古しているという人が多くいます。私たち日本人が、海外に出て武道実践現場に携わってみると、武道の文化性に関する関心の高さに驚かされます。

 日本の武道は長い歴史の中で、信仰や宗教、芸能などといった様々な文化と交流をもちつつ、それ自体が実に深みのある我が国固有の運動文化として発展してきました。それゆえに海外において武道は、ジャパノロジー(日本学、日本研究)の対象になっています。しかし、こういった武道の文化的な面に関する情報は、海外に十分に提供されていないというのが実情です。”せめて英語で書かれた正確な情報がほしい”といった声が多く届けられています。

 本ウェブサイトは、2012年2月に、こういった海外からの要望に応えるため、我われ武道学に携わる研究者が叡智を結集し、日本武道に関する正確で良質な情報を日本語と英語で発信しようとする、世界で唯一の画期的な試みとしてスタートしました。

 今回(2017年3月)、本ウェブサイトをリニューアルするにあたり、更に活動を発展的に拡大し、以下の“三つの柱”からなる「武道ワールドプロジェクト」を展開しようと考えています。

<武道ワールドプロジェクトの三つの柱>
  • 武道文化に関する様々な知見を、学術的な裏付けをしながら、日本語と英語のバイリンガルで発信します。
  • 本ウェブサイトを中核にしつつ、これまで築いてきた国際的なネットワークを更に拡大して、実技実践と学問、つまり技と知を橋渡しするグローバルな武道ネットワークを構築します。
  • アカデミックなレベルで世界の人たちが武道について議論しあう場として、フォーラムを継続的に開催します。

 武道では「稽古」という言葉を使います。『古事記』の序文に出てくる言葉ですが、私はこの言葉は「稽古照今」というフレーズで理解すべきと考えています。つまり、「古を稽(かんが)え今に照らす」ということです。本プロジェクトの三つの柱を通して、先人が日本文化の中で育んできた武道をよく知り、その深みを世界中の人たちとよく話し合い、考えて、これをグローバル化する現代社会に当てはめつつ今の私たちの生活に活かしていくことができればと考えています。

Budo World Staff

代表 酒井 利信 (筑波大学)
  大石 純子 (筑波大学)
  阿部 哲史 (ハンガリー剣道連盟)
  軽米 克尊 (天理大学)
  サボー・バラージュ (エトヴェシュ・ロラーンド大学、ハンガリー)